不変のものと変容するもの

    Coldplay<Christmas Lights>
    クリス(ヴォーカル)のクリスマス。
    クリスのためのクリスマス。
    すべてのクリスという迷える者への光。




    ルーツをたどれば、ロックンロールはアメリカを中心とした音楽文化。世界中の音楽が相対化されていくワールド・ミュージックの時代に、ロックンロールはポップ・ミュージックの一形態に過ぎないのかもしれませんが、閉じた世界ではなく、異種交配を重ね、ミックスを経ながら進化してきました。価値観を書き換える音楽こそ、ロックンロールを形容するにふさわしい捉え方でしょう。リズムは深く民族の伝統音楽に根付いている。多様性としての折衷は、ルーツを遡りながら、複雑な混血主義を反映し、多様な感情表現として拡大と変容を続けていくと考えるのです。ロックの躍動は、文化衝突のエネルギーを増大しつつ、ワールド・ミュージックの融合に向かって、そのスピードを加速し、未来になだれ込んでいくに違いありません。
    新しいサウンド、バンドの形態、テクノロジー、ヴィジョン、すべてが深化のなかで、アートの主権を獲得していくことを念願します。ロックを補完していくものは、ロックよりありません。わたしを補完するものはわたしよりなく、あなたを補完し、元気づけるものは、あなたの強い心よりありません。


    近ごろの寒暖の差の激しさのせいなのか、体調がおもわしくなく、咳が出たり熱っぽかったりするので、きょうはゆっくり身体を休めようと思っていたのに、こんな記事を書いたりして。日ごろの急進的な行いを反省しつつ、うつらうつらに考えごとなどをしております。
    ごめんね、いつも優しくしてくれているのに。
    熟慮と行動、ときにはハッタリとカモフラージュ、戦闘心、誠実さ、信念など、普通一般に言われているリーダーとしての素質を磨くために、後には引かないなどと勇ましいことを、口にはしませんが、健気に常日頃の心得としておりますが、体調が悪かったりすると意気込みも萎えてしまうのは、仕方ないことなのでしょうか?
    何事も継続することに意義があり、それは簡単なようで難しいことですが、わたしにとって、持続する執念が少ないような気がします。それでも、自分のことをある程度分かっていれば、自己弁護ではなく、潔く反省し、人間的成長と強い意志を磨くために、懼れずチャレンジしていきたいと、気持ちもあらたに考えます。
    関係ありませんが、日曜日にチョット片付けものなどをして、重いものを持ったせいか、少し筋肉がついたような気がするのですが、たくましい女子も素敵ですよね。

    Viva La Vidaフランスの象徴、ドラクロワの「民衆を導く自由」に激しい筆致で、≪Viva La Vida≫と、ペインティングされたアートワークを、しばらく眺めていました。「自由」「戦い」「革命」、そんな言葉が思いうかんで、聴く前から、興奮したのを覚えています。耳が痛くなるような喧騒な音が充満する現在のロック・シーンにあって、コールドプレイは時代性を超越し、トレンドやカテゴリーの外に、自分たちの世界を築き上げてきました。夜空にひときわ輝く星のように、そのサイレントな宇宙は、普遍的な色彩を帯びて、いつの時代にも受け入れられるエッセンスを持っていると思います。エモーショナルなサウンド構成は、わたしたちのハートにひたひたと、音楽的体験のカタルシスを味わせてくれるのです。日常のストレスや苛立ちから解放してくれるのです。
    コールドプレイの世界的なブレイクは、人間の心理のエニグマ的要素に、優しく語りかける癒しの効果があったのかもしれませんね。
    思慮深い?わたしは、この歴史的名盤をあらためて考えました。
    ドラクロワのマリアンヌは、何を象徴しているのでしょう?
    フランス革命を描いた最も有名な絵画に、何か意味があるのだろうか?
    そして、ガヴローシュの運命は、のちのち有名な作家によって、フランス一の著名な少年になるのですが、革命の戦場にシルクハットの紳士とは、やはりフランスの国民性と言うべきなのでしょうか。それにただ単純に、ふくよかな胸も露わな女神に、男たちが惹きつけられたのかもしれないなどと、考えたら妄想が広がり、際限なく横道に逸れていくので止めにします。
    ライナー・ノーツが指摘しているように、タイトルがすべてを言い表しているでしょう。

    <Viva La Vida or Death And All His Friends すばらしき人生と死>
    いきなりロックンロールの本質を突いてきたわね、とわたしは身構えたのでした。革命は詩心だ。いや、詩心が革命の原動力と言うべきか。
    冒頭から一聴しただけでコールドプレイと分かる。
    エスニックな雰囲気は、インターナショナルな世界観の提示と解釈しました。これ以上の成功は望めないというほどの勝ちを収めたバンドが、更なる冒険に旅立つために、世界をもう一度見直してみるという行為は自然なものです。特徴的なのは原初的なリズムへの接近でしょう。ロックにとって最も大切なものはリズムです。リズムが土台のように楽曲を支えているといってもよいでしょう。
    音波のうなり、ストリングス、複雑なリズムが一体となって押し寄せてくる。さらに転調の鮮やかさ、自由な曲想、想像力を刺激するメタファーな詞、精神的なガッツさをみせて持続する緊張感、変わらないブリリアントな展開と構成。コールドプレイはリスナーにロックの素晴らしさを、まだ無限に広がる可能性を見せてくれたのでした。

    テーマは “Life”と“Death”。
    西洋と東洋、またアフリカの死生観は根本的に異なっています。単純に、ワールド・ミュージック的なアプローチで表現するには重過ぎるテーマです。わたしは彼らの興奮と意気込みには、惜しみない拍手を送りたいと思います。しかしテーマを十分に消化しているとは思えないのです。テーマの設定と迫り方にやや不足を感じました。
    前作に比べればよりシャープさを増し、コントラストが鮮明なクリア・サウンドに変身したとも言える。また世界観を広げ、さらに一歩踏み込んだワールド・ワイドな視点が新鮮。数々の傑作をものにしてきたアーティストであり、名プロデューサーであるブライアン・イーノの力なのかもしれません。

    このアルバムで大事なことは、誰も指摘はしておりませんが、“Life”と“Death”という両極に位置する言葉の選択です。これはロックンロールのあり方と深く関わっています。

    不変のものと変容するもの。
    巌のように不動のものと陽炎のように揺らぐもの
    生の活力と死の静粛さ。生死即涅槃。
    動と静。成長するものと退化するもの。

    いかようにも解釈の幅は広がり、またそれぞれの立場で、原理と応用を適用するように、おもしろいように命題が見つかるのです。
    ノーマルとアブノーマル。
    伝統性と現代性。
    古典とロマン。
    オリジナリティとインプロビゼーション。
    長調と短調。
    普遍性と大衆性。
    正義と悪。
    平和と戦争。
    美と醜。
    明と暗。
    上昇と下降。
    塊と広がり、などなど。
    実と虚。
    マクロとミクロ。物質と虚空。
    この二面性を振幅するダイナミズムが、ロックンロールの醍醐味とも言えます。

    世俗的でありながら聖なるもの。
    刹那的でありながら永遠なるもの。
    神聖なるものとわたし。

    そして、わたしのなかの純潔な愛と裏切り。
    理性と感情。
    善意と悪意。
    賢明さと愚かさ。
    優しさと冷たさ。
    喜びと苦しみ。
    献身と失意。
    祈りと憎しみ。
    強さと弱さ。
    柔のなかに剛がある。
    わたしの血脈にも真っ赤なロックンロールが流れている。
    「美しき生命」と名づけられたこのアルバムは、希望を持ちアクティブな姿勢で生きるためのメッセージを、美しき旋律に書き下ろしたものです。コールドプレイの歴史に、新たなチャプターが用意されたのです。
    <Life In Technicolor> そんな色彩豊かな人生。そして、どこまでも変わりなく普遍的な光を求めて歩みたい。

    この動揺する時代に
    自分までぐらつくのは
    ただわざわいを増すばかり。
    おのれの志を守ってゆずらぬ者だけが
    世の中をつくりあげて行くのだ。

    ☆ゲーテ『ヘルマンとドロテア』

    仏法では不変的な志を説く。世俗の皮相さの奥に本質があり、諸悪のなかに一善がある。
    多数のなかの一人として、わたしも、志、堅固でありたい。


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