アンナの日記 ③

    2010.5.24 に書いた「不二の内界」と題する記事です。

    花の好きな娘がいた。
    バラを植え季節の花を育てて、花の香りのなかで暮らすことを夢見て、春に土を掘り返し、種を蒔いて愛しく育ててきたのです。
    去年の初夏のこと、麦藁帽子をかぶり、UVクリームの準備も怠りなく、花苗を植えていたら、見たことのない黒光りする長いものがスルスルと出て来ました。10㎝以上はある。
    幾何学的に規則正しく胴体がつながり無数の小さな足がせわしく動いている。
    まるで精緻に作られたロボット。
    「何だろう?」
    何にでも興味を示す娘は、考える間もなくハッと気がついた。
    「ム・カ・デ」
    娘はスコップを投げ出して、絶叫とともに腰を抜かしたのだ。

    初夏ともなればヒラヒラと美しい蝶が舞い、花の蜜を吸い、優雅な姿で娘の目を楽しませてくれる。それにしても脱皮する前の蛹はどうしてあんなに気持ち悪いのだろう?
    遺伝子のなかには進化の跡が刻まれているという。
    進化とはつまり、変身することではないのか? と科学に無知な娘は考えた。
    つまりつまり、生き物の変身願望が進化をうながしてきたのではないだろうか? と突飛なことを考えるのだ。まぁ~どうでもいいけど、あのムカデには二度と遭遇おことわり。

    グラム・ロックの先導者は、人間の奥深い変身願望を音楽のなかで実現したのではないだろうか。創造することとは、架空の別の自分になることではないのか?

    db-02.jpgデヴィッド・ボウイが、神託を受けたように作り上げたアルバム。
    彼の5thとなる傑作。
    セクシュアルな願望は、人間本能の根幹に関わっているように思えます。男女が一体になるという両性具備の姿は、グロテスクでありながら、生物の深遠な秘密を垣間見るようなエロティシズムを感じます。ロックにとって、エロティシズムほど重要な要素はないでしょう。パンクやメタルに顕著なように、その底に沈殿しているものは、紛れもなく巧妙に隠されたエロティシズムです。
    また深い音楽的カタルシスは、心という内面に火が熾るようなエロティシズムの熱いうずきが関係していると思います。
    アルバムのなかからじっと聴き手を見つめているボウイの中性的、ホモセクシュアルな外見に惑わされてはいけません。彼の真の才能は、エロティシズムを制御し昇華する知性にあります。彼は虚構や物語的コンセプトによって、変身願望をシアトリカルに演出しました。
    このアルバムは、美しき想像力の結晶であるばかりでなく、ロックが新たに踏み出したアバンギャルドな手法でもありました。したがって彼のグラマラスなパフォーマンスは、音楽を含めたアートであり続けると同時に、その後も多くのロッカーに大きな影響を与えることになります。全曲が佳曲です。ムダな曲はありません。素晴らしい!

    ジギーの夢は、ロックによる魂の救済ドラマとして、普遍の輝きをもって訴え続けるでしょう。鮮やかなアルバム・コンセプトと同じように、この未来に向けたメッセージは感性が編んだ、また透徹した知性のほとばしりの表れです。今こうして聴いても古さとは無縁の真のロックが鳴り響いています。確かにボウイは、このアルバム製作過程において神がかっていたと言えるでしょう。

    db-01.jpgボウイの端正な顔立ちに、ロックスターの自由な精神と知性がバランスした美しい姿を見ることができます。彼の進取の精神は、やがて様々なジャンルへの挑戦と現れて、先鋭かつエモーショナルな美しさで、独自のデヴィッド・ボウイ・スタイルとも言うべき実験を繰り返していきます。スーパースターでありながら決してそこにとどまろうとしない。現在の21世紀ロック・ジェネレーションは、彼の創造性と知性に学ぶべきです。試行錯誤を経ながら行動するアーティストのオリジナリティーに敬意を表すべきです。
    彼のオールキャリアを言及するのは難しく、それは紛れもなくブリティッシュ・ロックの奥深いエクセレントな側面をたどることにもなるのですが、これからも時代と年齢を加味したトランスフォーメーションを楽しみたいと思います。

    Soul Love



    ★2016年1月10日、18か月の闘病の末、肝癌により死去。69歳。
    独自の美学と大胆な音楽性に貫かれ、波乱と平和が同居した人生だったと思う。
    大の日本好きで知られました。日本文化に誇りを持ちたいと思う。



    旋律が浮かんで 頭のなかがいっぱいになり
    わたしは歌わずにいられない
    わたしが愛したもののために
    わたしを愛してくれたもののために
    旋律を 手でつかみながら 分け与えるように
    花束のようにいとおしく 美しく包んで 花輪を投げるように
    幸福という音楽を 未来の誰かのために
    音楽は調和の花束
    音楽は平和大使のように
    密やかに佇み愛の花のように優しい
    都市生活者の楽しみは
    何気に見落としていた道端のスミレに
    淡いピンクと白の繊細な色彩に
    春の芳香と暖光の輝きを見つけ出したとき
    小さな鉢に濃いピンクのプリムラの小花
    キンレンカと赤いチューリップの寄せ植えコンテナに
    たっぷり水をやり
    粗野で激しい世界のかたすみで
    魂の平安をもたらす聖人のなぐさめのように
    静かな息づかいで善の音楽を奏でる
    濃いグリーンの葉のうえで 光が遊び
    戸惑いとともに歓び 驚きとともに夢見るような
    思慮深い紫の矢車草が
    わたしに微笑みを贈ってくれた
    ときどき神は変身し
    ムカデになって娘を驚かす
    でもよく見てみなさい
    軽やかに動くムカデの足は
    リズム正しい律動の美しい骨格でできていることを
    その足は断固とした意志で土をつかみ
    憎悪も慈愛もなく
    ただ見事に進化の奇跡を表していることを
    不二の内界で生を謳歌し
    かわいらしい目で前方の
    外界の障害だけを見つめ続けている不思議な生き物であることを

    by Anna


    as386-1011.jpg
    【 All Entries 】
    9651wal.jpg
    【 New Entry 】
    【 Comments 】
    <>+-
    RSS of the latest comments
    【 Archive 】
    【 Category 】
    【 BlogMURA 】
    md26ry.jpg