香港クーデター

    過去のことなど、よほどのことがないかぎりすぐ忘れてしまう現代人の特徴的性分と傾向性は、アップデートを拒絶した脳のメモリー領域の飽和状態を示しているのではないかと考えたりもします。一年前のこともすっかり忘れているので、問題の分別も経過の見透しもありません。もちろん、自己批判を兼ねた自己評価です。

    一年前の11月15日のロイターニュースは、アメリカの強い決意を示す内容だった。
    『ペンス米副大統領は15日、シンガポールでの東南アジア諸国連合(ASEAN)の各国首脳との会談冒頭で、インド太平洋地域において「帝国や侵略」は存在しないとの考えを示した。
    ペンス氏は、インド太平洋地域で大国と同様に小規模の国も繁栄し、主権を確保し、それぞれの価値に自信を持ち、共に成長することができると強調。中国に言及はしなかったものの「インド太平洋地域で帝国や侵略が存在する余地はないという認識でわれわれは一致している」と述べた。
    米国はこのビジョンを推進するため、インフラ部門への民間投資後押しや自由かつ公平で相互的な貿易の促進などを行っていると説明した。
    また、「北朝鮮に対する圧力」や「航行や飛行の自由を支持するための取り組み」、デジタル世界における東南アジア諸国の国境、領土、領海の安全保障を確保するための米国の決意を強調した。
    ペンス氏は10月初旬に行った講演で、対中強硬姿勢を鮮明にし、トランプ政権を弱体化させるような中国の「悪意のある」動きや南シナ海における無謀な軍事行動を強く批判した』


    アメリカのこの地域へのインフラ支援は、600億ドルの用意があることを表明。借金漬けにしながら乗っ取りを企てるような中国の支援のあり方を批判した。
    ペンス氏は一月前の10月に、トランプ政権の基本的な外交姿勢ともいうべき内容の演説を行っていますが、この重要な演説が大統領ではなく、冷静なペンス氏であることに救いがあるように思えます。平和への調停役にこそ、アメリカらしい自信をうかがい知ることができます。自国第一主義は、超大国には相応しくありません。誤解を生む派手なパフォーマンスのトランプ大統領ばかり目立ちますが、中国の覇権主義こそ、ナショナリズムにつながる自国第一主義というべきでしょう。人間をコントロールし、管理し牛耳り、君臨し従属させる非人間主義が、中国社会主義・共産党独裁の隠された正体です。

    「中国の人間主義」について、正確な洞察もなく手放しに賛嘆している池田先生の香港中文大学の講演があります。返還前の92年のことですが、返還後を期待してのことは言うまでもありません。理想主義者の言葉が、今では虚しく響いてきます。
    創価のHP(https://www.sokanet.jp/download/koen/03.pdf)にも掲載されているので誰でも読むことができますが、香港の混乱が第二の天安門事件に発展している現在においては、講演できない内容でもあります。

    一国二制度について、朝日新聞デジタルでは次のように説明されております。
    香港返還と一国二制度(2017年07月02日 朝刊)
    英国はアヘン戦争(1840〜42年)で清に勝って以降、段階的に香港を統治下に置き、1898年に香港全域を植民地とした。1980年代に本格化した返還交渉を経て英中両国は84年に共同声明に調印し、97年に返還することで合意した。香港では返還から50年間は、資本主義など中国本土とは異なる経済・政治制度を維持することが約束され、外交と国防をのぞく「高度な自治」が認められた。香港の「憲没にあたる香港基本法には、中国本土では制約される言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由、信仰の自由などが明記されている』

    50年の半分も経っておりませんが、制度維持の約束は破られています。中国らしい虚偽と謀略テクニックですが、やがて信仰の自由も制限されることは疑いがありません。中国本土では宗教は弾圧対象です。
    聖教に、7月には遼寧省大連市・大連海事大学に「池田大作研究センター」、10月には河北省保定市・河北大学に「池田大作研究所」が設立されたことが報道されました。
    中国の池田研究は、体制への従順と忠誠を証明するひとつの公式な認可のようなものです。政権に逆らいませんという宣言のようなもの。人権を標榜し目的とする団体が非人権の思想に参意を示してもおかしいと考えない矛盾があります。人間なら二律背反の分裂状態に陥りますが、我慢強い仏法者は平常です。本音と建前が違うということでは、創価と共産ファシズムは相似なのかもしれません。表と裏が違えば二重人格です。思想がまったく相違するのに、行動はアナロジー。おもしろい研究課題ですね。

    92年の、香港中文大学での講演『中国的人間主義の伝統』では、最高客員教授の栄誉を授賞。現在の大学は混乱のただ中にありますが、最高の栄誉を受けた人は何も語ろうとしません。民主主義を見捨てております。法華経の精神である、「他者への貢献と尽力」を、「影響力の純粋な行使と活用」を良心的に試みることすらしないのはどうしてでしょう。
    法華経は行動哲学です。観念ではありません。他者の苦悩を共有することなのではないでしょうか。香港には多くの会員がいることでしょう。どうしてその混乱を見て見ぬ振りができるのでしょうか。一つしかない最高の栄誉を授賞しているのに、混乱時の行動は冷淡そのものとは、マキシマムとミニマムの折れ線グラフを見ているようです。
    口を開けば絵に書いた総論ばかりで、切実な個別の問題には関与しないという非リアリスト。生老病死は総論で語れるほどの大雑把な概念的問題ではなく、個々で相違するバリエーション豊かな人生問題なのですから、宗教家は夢想家ではなく実際家でなくてはならない。
    『湾岸戦争の勃発で明け、ソ連邦の消滅で幕を閉じた昨年は、世界史が、文字どおり、地殻変動ともいうべき大揺れを演じた1年でありました。よく"筋書きのないドラマ"といわれますが、ここ数年の国際情勢の動きは、どんな練達な歴史家の眼をもってしても、読みきれなかったにちがいありません。
    とりわけ、69年間にわたって続いてきたソ連邦のあっけない消滅は、ファシズムとコミュニズム(共産主義)という2つのイデオロギーが暴走した20世紀の幕引きを、何か象徴しているように思えてなりません。激動する時流は、私どもに改めて厳しく問いかけております。一体、イデオロギーのための人間なのか、人間のためのイデオロギーなのか――と』

    四半世紀前はソ連崩壊でも、今は中国というファシズムとコミュニズムの暴風雨が荒れ狂っております。コミュニズムは信仰否定の狂気です。尊厳に対する拒絶への強い意志です。
    香港が今後どのようになっていくのか、ニューズウィーク日本版の記事には適切な問題提起がある。
    『中国の指導層が基本法を廃止し、香港の指導層を直接任命し、司法の独立性を弱めまたは排除し、市民の自由を制限し、政治的な反対運動を抑え込もうとしていることは確かなようだ。つまり中国政府は、1997年に香港が中国に返還されたときに鄧小平が50年間維持すると約束した「一国二制度」モデルを事実上放棄することを決めたのだ』
    『中国は2003年、香港の立法会に国家安全保障法案を可決させようとした。しかし50万人を超える住民がデモに参加し、法案を撤回に追い込んだ。2012年には香港の歴史教科書を変更して「愛国教育」を導入しようとする試みが親と学生の抵抗に遭い、政府は引き下がった。
    中国政府が香港を完全に支配しようとすれば、さらに多くの、そしてさらに大規模な暴力が展開されるだろう。街は混乱を極め、統治が不可能になる』
    「香港の完全支配を目指す中国を、破滅的な展開が待っている」CHINA’S RISKY ENDGAME IN HONG KONG

    中文大学での講演は「中庸」という極めて中国的な儒教倫理に、仏教的概念である「中道」と重ね合わせ、人間主義なるものの正統性を強調している。中国に媚びを売る商売上手な性格は、創価の本質と断言しても言い過ぎではありません。
    第二の天安門事件で世界中から総スカンを食らった中国に、真っ先にご機嫌取りを敢行したのは池田先生です。事件で弾圧され殺された側に同情するわけでなく、その人権虐待と強圧的な政治に対して世界から批難される側を擁護する姿勢は、とても仏法者とは思えませんが、何より人間主義を標榜する法華経の精神を冒涜し誹謗している。
    天安門事件の翌年、1990年の第7次訪問では北京大学で講演しましたが、古代ギリシャのプラトンの教育法と対比しながら、それを上回るものとして中国伝統の教育法を普遍的なものとして絶賛しています。わたしですら読んでいて赤面しますが、それを聞いていた北京大学関係者は頭をあげられなかったことでしょう。その後の共産主義の愛国教育はまともではない。国民の意識を偏らせ、蝕み、その後の世界への悪影響は計り知れない。なにしろ、億単位の人間がいっせいに同じ方向に手を上げ、その手で石を投げ、口汚く罵り、破壊活動に邁進するのですから。政府も批判されると決り文句のように「内政干渉だ」と非常事態宣言のように最後の切り札をちらつかせる。この先通行禁止だから誰も通るなという独裁特有のジコチュー満タンの戦車に乗り込んで、道路の真ん中を塞ぎ砲身の照準を合わせている。

    『現在の中国に必要なのは軍事力強化ではない。環境問題をはじめ、少数民族の人権抑圧の是正、膨大な数に上る極貧層の救済、急激に進んでいる高齢化への対応、失速する経済の立て直し。優先すべきなのは、こうした困難な国内問題の解決だ。
    国内経済は米中貿易戦争で急速に悪化している。それ以前から減速傾向は顕在化し、2018年の成長率は28年ぶりの低い伸びにとどまった。雇用環境の悪化は社会不安を増大させ、政権批判が次第に強まっていくだろう。
    対外関係に目を向ければ、現在、アジアで最大の軍事的な脅威は中国だ。南シナ海では岩礁を埋め立てて、人工島を造成し、軍事拠点化を進めている。ここでは周辺国との関係が険悪化している。
    東シナ海では沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張し、公船による日本の領海侵入を繰り返している。覇権主義的な中国の動きを巡って、国際的なイメージは悪化の一途だ。
    ニューヨークで開かれている国連総会で先週、諸外国から次々に懸念が表明され、中国の代表団は火消しに追われたという。各国は香港の民主化要求に共感し、少数民族の抑圧に重大な懸念を抱いている。中国に対する国際世論は非常に厳しい。
    国内融和と国際協調。中国に必要とされているのは、この二つだ。問題の平和的な解決を図りつつ、民主主義国家への緩やかな移行を目指すのが最も望ましい道だろう』
    「河北新報」10・2

    国連では6月、スーダン軍が民主化を求めるデモ隊を強制排除し多数が死傷した3日の事件については、事務総長が「市民に対する治安部隊の過剰な武力行使を強く非難し、集会や表現の自由を含むあらゆる市民の権利を守るよう、軍暫定政権に要求している」と語りましたが、天安門事件について感想を求められて「特にコメントはない」と答えました。事務総長の仕事は紛争解決の総括。国連予算の分担率が世界2位の常任理事国には、苦言を言い出しにくい。しかしそのうえで交渉しなければならない喫緊の諸問題について、リーダーシップを発揮する歴史的な役割があるのです。事務総長もまたネゴシエイターの一人でしょうが、一流ではないように思える。無力な国連に期待するのは難民だけかもしれない。
    最近、重大ニュースが発表されました。新疆ウイグル地区の強制収容所に関する中国政府内部からのリーク、内部文書。ヒトラーよりひどいジェノサイドが明らかになるのはいつごろのことなのでしょうか。池田先生はウイグル地区からも名誉称号を多く受けておりますが、知識人や大学関係者が捕らえられ拷問を受け無実で牢獄に繋がれている現状に、目を塞ぎ知らないふりをしている。今年のSGI提言でアカデミック・インパクトにふれておりましたが、「平和・紛争解決」「異文化間の対話や相互理解」のSDGsの目標について、創価大学も参加していることを力説していたではありませんか。紛争と差別のまっただなかにある大学に理解を示し、支援することが真実を愛する言論人の取るべき行動です。腐れた人間主義者は、"提言"や"永遠の指導"でもう大きな口を叩かないでください。
    共産党支配という古い秩序に挑戦している香港の変革のエネルギーこそ、「人間中心の多国間主義」を実現する最も近いアプローチだと思う。差異による排除を許さない行動が、自他共の幸福に展開していくことを願わずにいられません。

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    Ancient Order
    Anne-Sophie Versnaeyen,
    Gabriel Saban & Philippe Briand




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